著名人コメント

『月と雷』はとても心に響く映画です。
私はこの映画がとても好きです。
Erikoが演じる女性は素晴らしく、見ていて涙が零れました。
愛の欠乏、かつて置き去りにされた記憶は、登場人物たちの心にぽっかりと穴を開け、それが満たされることはありません。
彼らは育った環境ゆえに、人生に戸惑いを感じています。
置き去りにされ、傷つき、それを思い出させる人生の突然の変化を恐れ、そっと息を潜めて生きているのです。
登場人物たちは皆、それぞれ見捨てられた経験を持っています。
この映画には素晴らしい台詞が織りなす印象的なシーンがあり、
これらを演出するのは難しいことですが、安藤尋監督はそれを見事に、繊細にこなしています。
ErikoとKengoは素晴らしい演技を与えてくれました。
そして、彼女の魅力と美しさが、この物語を一段と輝かせています。

トラン・アン・ユン(映画監督) 代表作:『エタニティ 永遠の花たちへ』『ノルウェイの森』『青いパパイヤの香り』ほか

角田光代原作、本調有香脚色、安藤尋監督の『月と雷』は、写実的で、感動的で、挑発的な映画だ。ある日本の崩壊した家族と 、大人になっても癒えることのない子供たちの戸惑いや疎外感を、じっくり描いている。
物語の中心となるのは初音映莉子が繊細に、力強く演じる若く美しい女性、泰子。親密な人間関係を避け、孤独な生活を送っているが、ある日、仕事場に現れた過去からの訪問者(高良健吾)によって、変化がもたらされる。
初音の心のこもった演技は静かな輝きを放ち、映画は戦後の小津映画を彷彿とさせる。小津のような抑制と誠実さをもって『月と雷』はリアルで詩的な瞬間を積み重ねてゆくが(初音、高良と、草刈民代が好演する、泰子を置き去りにした酒浸りの女性との間で織りなすもの)、その見事なラストショットで昇華し、泰子が深い霧を抜け出し、愛する人達と生きて行くことを暗示している。
これこそ今日の映画界には稀な、ヒューマニズム溢れる珠玉の作品だ。

ジェームズ・マンゴールド(映画監督) 代表作:『LOGAN/ローガン』『3時10分、決断のとき』『17歳のカルテ』ほか

素晴らしい映画でした。安藤監督の中ではピカイチだと思います。初音さんももちろん良かったですけど、草刈さんが演じていた、やさぐれているんだけど、どこか哲学を持っているあの直子というキャラクターは実際に僕が通っていたスナックとかにもいて、すごいリアルだなって思いました。ああいう、風来坊だけど毅然とした佇まいをしている女性に男が惚れてしまうのは個人的によくわかる。高良さんがとりわけ良かった。彼も考えに考え抜いて最後にああいう決断をしたんだ、というのがひしひしと感じられた。キャラクターが抱えている思いをセリフではなく画で見せるのが映画だ、ということを改めてこの作品を通じて感じることが出来た。原作者がこの映画を気に入ってるのも理解できる。自分が創造したキャラクターたちが、この映画のように血肉となって、素晴らしい形で映像化されたら、そりゃ喜ぶでしょ。この映画は、年末の賞レースにも絡んでくる作品だと思います。

秋本 鉄次(映画評論家)

素晴らしい映画だ。中心となる3人の俳優の演技が、この脚本にある難しい壁を見事に飛び越えていて圧倒される。初音映莉子の感情表現はステレオタイプなものとは全く違って、自分の生理で、なおかつ自分自身に問いかけながら行われているかのようだ。
俳優たちの声の質と、息づかいと視線だけで作られている。これほど集中してしまう映画は久しぶりだった。

山内 ケンジ(劇作家、映画監督)

みんなどこかが狂ってる。初音映莉子の怯えた愛欲表現も。高良健吾の口角あげた妖しい少年性も。草刈民代の自堕落な浮遊感も。それぞれが微妙にズレながら絡み合う。日常テイストのファンタジーですね。キャストが絶妙。芝居が良い。共感できる奴なんて誰一人いやしないけど。あるかもしれんが渦巻くうすら怖さが深くて、すこぶる面白い。

黒須 美彦(CMプランナー)

これまでバレリーナ=草刈民代のファンだったが、女優=草刈民代のファンにならざるを得ない。退廃的で刹那的な美しさに満ちた直子の生きざまが、若い2人をとことん不愛想に、でも誰よりも優しく包み込む。

遠藤 薫(映画ライター)

のっぺりとした時間、ねじれた風景、腑に落ちない気分、甘い喪失感、違和感のあるふつうの生活。だが、人間というのは、なべてそのように、ずるずるとした日常のなかで生きている。しかし不思議なことに、漂いながら、ふと立ち止まったときに、ありありと見えてくるものがある。ずるずると漂いながらも、「あッ!」と感じるリアルな瞬間がある。この映画は、そういう「あッ!」という感覚を描いている。見事である。

渡辺 裕一(コピーライター)

多くの言葉を交わしても分かり合えない時があり、一言も話さなくても相手の肌に触れるだけで分かり合える時もある。普通の幸せ、そして理想の家族とは何かを本作は観客に優しく問いかけるのです。

コトブキツカサ(映画パーソナリティ)